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国内外のスマホゲーム市場の分析や最新情報を発信するメディアです。著者は港区のスマホゲーム会社勤務中。

「アプリ内課金」からゲームの収益を考える

あなたも無料でダウンロードしたのに、夢中になってつい課金してしまっていた経験があるのではないでしょうか。

 

課金は家庭用ゲームにはない、スマホゲームの面白さだと思います。


さて前回、無料ゲームがお金を稼ぐ仕組みは「広告」と「アプリ内課金」であるという内容を記載しました。

今回は「アプリ内課金」を整理してみます。

 

アプリ内課金の種類

定期課金型

1ヵ月など一定期間に決まったお金を払ってもらう、会員登録という課金方法です。

スマホ以前のガラケー時代にはよくあった課金方法ですが、今のスマホゲームではほとんど見かけません。

ただ、このタイプの課金がアプリ上でなくなったかといえばそうではありません。ニュース共有サービスの「NewsPicks」や家計管理アプリ「Money Forward」などは定期課金という手法をとっています。現在の定期課金型サービスの特徴は、無料でサービスすべてを使うことはできないということだと思います。現在のスマホゲームの多くは無料で最後まで楽しめるため、この方法は適切ではないのかもしれません。

 

機能解除型

一度購入すればずっと利用できるような非消費型の課金モデルです。 無料アプリの広告を解除する場合やゲームアプリなどで機能制限を解除する場合等に利用します。

課金することによって、新しいゲームステージの追加やコンティニュー回数の増加など、ゲーム内でユーザーに課されている制限を解除してゲームのプレイの幅を広げたり、有利に進めるようにします。

 

アイテム販売型

現在のスマホゲームの主流で、 一度利用すると無くなるような消費型の課金モデルです。同じアイテムを何度でも購入できるため、ゲームアプリのアイテム課金等で利用します。現在では、強力・希少性の高いキャラクターやアイテムを手に入れるためにはゲーム内のガチャを回す必要があります。

何度もガチャを回すためにはアイテムを手に入れる必要があり、アイテムに課金することになるのです。このようにして、アイテム販売型はアプリ内課金で最も収益性が高くなっています。

 

まとめ

一口にアプリ内課金といっても、時代やサービスの方向性によってその方法は異なることがわかりました。スマホゲームでは定期課金型からアイテム販売型に変化しました。スマホゲーム企業側がアイテム販売型に切り替えた理由は、同業の競争相手が増えた上に、スマホゲームの開発からリリースまでの周期がガラケー時代よりも早くなったからではないでしょうか。生き残りをかけて、短期間でも稼げる仕組みに変えていったと考えられます。

 

「広告」からゲームの収益を考える

今更ながら、無料のゲームがいかにして収益を上げているのかを取り上げたいと思います。

無料ゲームがお金を稼ぐ仕組みは「広告」と「アプリ内課金」です。


今回は「広告」で収益を上げる仕組みを整理していきます。

 

広告の表示形式

バナー広告
画面の上や下に設置されている横長の広告で、画面上に表示されている場合が多いです。スマホゲームで最も多く利用されている広告となっています。

アイコン広告
アイコン広告はバナー広告とは異なり、正方形の画像を表示するため、画面の占有スペースが少ないのが特徴です。

全画面広告
画面全体に大きな表示されるタイプの広告です。スマホの画面全体を占有するため広告効果は非常に高いですが、ユーザーのゲーム体験を阻害する可能性が高いため、広告を出す場所は限定されます。

動画広告
全画面広告の一種で、ユーザーに一定時間動画を見せるタイプの広告です。Youtubeなどスマホで動画を見るようになったことから普及しました。

ウォール広告
画面全体を占領する広告で、いくつもの広告をリスト形式やアイコン形式で表示します。ウォール広告は画面に表示ボタンが設置しており、ユーザーがそのボタンを押すことで表示されます。表示ボタンはユーザーの意志によって押されるため、質の高い広告といえます。

 

広告の収益タイプ

クリック課金
広告がタップされることで収益が発生します。ゲームアプリに表示されているほとんどの広告がクリック課金型となっています。

成功報酬型広告(アフィリエイト広告)
広告のクリック後に、広告主の商品・サービスが購入・申込された場合のみ費用が発生する広告です。広告主にとっては費用対効果が高く、広告を載せる側も収益性が高くなります。

 

ゲーム内広告設置のポイント

 ■シミュレーションゲームのような動きの少ない思考系のゲームでは常駐的にバナー広告を表示するのが得策です。ゲームプレイ中、ユーザーの動きが少ないため広告を見てもらいやすい傾向にあります。

■アクションゲームの場合は、ユーザーが激しい操作を行う以外のタイミングで広告を出す必要があります。具体的には、起動直後のタイトル画面、ステージクリア後の結果画面、ステージ間の推移時に広告を出すと効果的です。

 

起動直後のタイトル画面
ゲームプレイ中に必ず1回は、タイトル画面が表示されるため、
バナー広告、アイコン広告、ウォール広告の表示ボタンなどを表示しておきます。
タイトル画面に広告を表示するのは当たり前すぎかもしれません。

ステージクリア後の結果画面
ゲームをクリアした後なので、ユーザーは落ち着いて広告に目を通してくれる可能性が高いです。結果画面との兼ね合いもありますが、バナー広告やアイコン広告が適しています。

ステージ間の推移時
ステージの切り替わり時は、全画面広告を表示します。
ゲームプレイ中ですが、ステージの切り替わり時、ユーザーは手持ち無沙汰な状態となるので、広告効果の高い全画面広告が有効です。

※アクションゲームの場合、常駐的に広告を出すと、操作に夢中のユーザーは表示されている広告に興味を示さず、クリック率が下がります。クリック率が下がると、質の悪い広告媒体と評価され、1クリックあたりの単価が下がってしまいます。

 

まとめ

広告表示にも様々な種類があり、場面に応じて使い分ける必要があります。広告の単価が下がり続けている中で、今後どのような方法で収益を確保していくのでしょうか。次回は「アプリ内課金」について取り上げます。

 

 

 

 

ツムツム人気の理由を探る!ゆるやかなソーシャル性は現代社会の鏡?

電車の中で『ツムツム』をしている10代、20代女性をあなたも目にしたことがあるのではないでしょうか。

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(画像:ネタとぴより引用)

 

Google PlayApp Store両プラットフォームの売上ランキングでトップ10に入る『ツムツム』。

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 (画像:Google Playより引用) 

 今回は、『ツムツム』が人気の理由をユーザーが「ゲームに興味を持つ」「実際にゲームをする」「継続的にゲームをする」という3段階に分けて考えていきます。

ゲームに興味を持つ前の「ゲームを知る」という点について、『ツムツム』はCMを大々的に行っていたので、今回は取り上げません。

 

 そもそも『ツムツム』とは

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 (画像:Google Playより引用) 

『ツムツム』はLINE株式会社が提供するスマートフォン向けのパズルゲームです。正式名称は『LINE: ディズニー ツムツム』です。ディズニーストアで販売されているぬいぐるみ「TSUM TSUM(ツムツム)」がゲームのキャラクターとして登場します。制限時間内に同じキャラクターのツム(ぬいぐるみ)を3個以上つなげると、つながったツムが消え、その個数等に応じた得点が獲得できます。ユーザーは、同じツムをたくさん長くつなげて消し、高得点を目指します。

 

親しみやすいキャラクターの起用で興味を持つ

ディズニーという誰もが知っているキャラクターを起用することで、キャラクターに対する抵抗はなく、ユーザーに安心感や親しみを感じさせます。

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(資料:2015年の調査、MMD研究所より引用)

特に女性の場合、可愛らしいキャラクターのために、「少し、やってみようかな」とゲームに興味を持ち始めるきっかけにもなるのです。実際に、女性の「ダウンロードして遊んだことがあるゲームアプリ」の1位は『ツムツム』という結果が出ています。

 

シンプルかつ短時間で行える仕組みで実際にゲームをする

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(画像:Google Playより引用)

『ツムツム』は同じ種類のツムを探して繋ぐだけという非常にシンプルな仕組みとなっています。また、ゲームのプレイ時間は1分と短く、隙間時間で集中して行えるというのも特徴です。この手軽さがゲームをしないユーザー層にも受け、現在6000万ダウンロードを突破しました。

 

飽きのこない仕組みとゆるやかなソーシャル性で継続的にゲームをする 

【1】飽きのこない仕組み
①イベントが豊富
継続的なイベントと期間限定のイベントがあり、ゲーム内で用意された様々なミッションをクリアすることによって、ゲームを有利に進められるアイテムや上位レベルのツムを無料で手に入れることができます。

②キャラを集め、育成する楽しみ

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(画像:Google Playより引用) 

『ツムツム』では有名なディズニーのキャラクターが勢ぞろいなため、キャラクターのコレクションをする楽しみがあります。尚、キャラクターを得るためには、ゲームをプレイしたり、課金することで得られるコインでガチャを回す必要があります。

育成においてツムを強化するには2つの方法があります。
ツムをマイツムにセットし、メインで育成する方法と、同じツムを合成することでスキルレベルを上げる方法です。それぞれが違った意味でツムの強化になり、やりこむ要素となります。

【2】ゆるやかなソーシャル性

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(画像:Google Playより引用)

ツムツムはモンストやパズドラとは異なり、完全に一人でのプレイです。友人と協力して同じミッションに取り組むことはありません。
ただし、LINEでつながっているリアルの友人同士で、ゲームをプレイするのに必要なハートをプレゼントできたり、友人とゲームの得点の順位を競うことができます。1人でゲームをしつつも、友人のプレイ状況を把握することができる仕組みとなっているのです。

 

まとめ

今回は、『ツムツム』の人気の理由について取り上げました。「女性人気が高い」、「短時間で行える」、「RPGではない」、「協力プレイがない」など売上上位にランキングされているゲームの中でも、『ツムツム』は特殊なタイプです。
そこで、ユーザーに対してゲームに興味を持たせる段階から継続的にゲームをプレイしてもらう段階までを分けて考えてみました。特殊なタイプの『ツムツム』はそれぞれの段階で何を重視し、どのような工夫があるのかが明らかとなったのではないでしょうか。
特に「ゆるやかなソーシャル性」は、付きすぎず離れすぎないという現代社会の個人と個人の心理的な距離のとり方を反映しているのかも知れませんね。

 

新作『ヴァルキリーコネクト』が累計100万DLを突破!エイチームの開発現場に迫る!(2/2)

全2回の構成で、第1回は『ヴァルキリーコネクト』とその開発・運営会社エイチームについて紹介しました。


今回はエイチームの開発現場、特にゲームの制作体制において大切にしていること
を取り上げたいと思います。

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 画像引用元(株式会社エイチームHP)

チームの裁量権と個人の積極性を大切にする現場

 ゲーム開発・運営は、プロジェクト制でタイトルごとのチームになっているため、ディレクターやプランナー、プログラマなどが1つのチームに所属しています。意思決定においてはエイチームの基本的な風土としてトップダウンではなく、チームにすべての権限があります。しかも、1つのプロジェクトを10~20名で担当しているため、一人ひとりの発言権が大きいのも特徴です。

デザイナーやエンジニアが企画に意見を出すことは頻繁にあり、全体の方向性を動かしていくことも可能な制作体制となっています。チーム全員で、ビジョンを共有し、責任を持ち、目標を達成するというスタイルでゲームづくりを進めています。

ランチの時間にも熱く議論を交わしていたり、新人が先輩に堂々と意見をぶつけることもよくあることだそうです。ただ、この風土が成り立つのは、それぞれが謙虚さを併せ持っているからであって、積極性と協調性のバランスは重要なポイントです。

 

 制作におけるこだわりは「お客様視点」と「入念な準備」

 世の中から求められているものを作るというのが前提で、技術からスタートするのではなく、コンセプトを実現するために最適な技術を選択するというスタンスを持っています。また、新規開発のときからリリース後の運用を入念に考えて設計しています。コードの可読性やアップデートの仕組み以外にも運用時に必要になってくるプログラムの部品化も事前に考えた設計となっています。

 

チームや職種の垣根を越えた共有

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 画像引用元(株式会社エイチームHP)

必須参加の定例ミーティングが多数あり、チーム間の共有に力を入れています。チームどころか事業部を超えた共有まで大切にしており、他のチームや事業に興味を持つことを社員の務めと考えているそうです。チームは職種ではなくプロジェクトで分かれているため、職種間では当然のように情報共有されています。
共有を大切にすることで、社内は非常に風通しのよい雰囲気で、対立するような意見もお互いに出し合い、ポジティブに指摘し合える文化があります。

 

まとめ

名古屋から始まったエイチーム。優秀な人材の確保や情報量といった面で東京や大阪に比べ、ハンデがあったようです。しかし、同社は4年前には上場を果たし、現在では東京と大阪にも拠点があります。成長の背景にはチームとして成果を出す体制、チームメンバーの積極性を大切にする雰囲気作りがありました。

そして、先日発表された第3四半期の決算では四半期最高売上、営業利益を達成しました。今後の成長がますます楽しみな会社であることは言うまでもありません。

新作『ヴァルキリーコネクト』が累計100万DLを突破!エイチームの開発現場に迫る!(1/2)

今回は『ヴァルキリーコネクト』が累計100万ダウンロードを突破したことにちなんで、エイチームの開発現場を取り上げたいと思います。

全2回の構成で、第1回は『ヴァルキリーコネクト』とその開発・運営会社エイチームについて紹介します。

株式会社エイチーム(本社:愛知県名古屋市代表取締役社長:林高生、以下エイチーム)は、スマートフォン向け至高のハイファンタジーRPG『ヴァルキリーコネクト』が6月9日(木)の配信開始から13日間で累計100万ダウンロードを突破したことをお知らせいたします。
(株式会社エイチームHPより引用)

 

『ヴァルキリーコネクト』とは 

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 画像引用元(Google Play )

『ヴァルキリーコネクト』は、エイチームの代表作『ユニゾンリーグ』の制作スタッフが手掛ける最新作で、3Dのキャラクターがオートでバトルするスマートフォン向けRPGゲームです。シナリオ、サウンド、キャラクター、声優にこだわり、全く新しい北欧神話の世界観を創り出しています。

キャラクター固有の「アクションスキル」や連携して発動する必殺技「リミットバースト」など、迫力の演出が見所です。さらに、本作最大の特徴である「コネクトバトル」は、リアルタイムに自分のパーティーと友達のパーティーを含めて、最大15人のキャラクター達と協力して強大な敵を倒す今までに無いゲーム体験を提供しています。

 

エイチームとは

エイチームは、名古屋に本社のあるIT企業で、東京と大阪にもオフィスを構えています。事業内容は2つで、携帯電話・タブレット端末向けゲーム、デジタルコンテンツの企画・開発・運営を担う「エンターテインメント事業」と日常生活に密着した比較サイトや情報サイトなどの企画・開発・運営を行う「ライフスタイルサポート事業」があります。
「エンターテインメント事業」では代表作『ユニゾンリーグ』、『ダービーインパクト』、『三国大戦スマッシュ!』などは国内外問わずグローバルに提供しており、月商1億円を超えるゲームタイトルも複数手掛けています。

ソニーからPlayStation VRが発売!競合他社と今後の展開を考える

6月14日、ソニーインタラクティブエンタテインメントジャパンアジアは、「プレイステーション 4」(PS4)の魅力を高め、ゲーム体験をより豊かにするバーチャルリアリティ(VR)システムPlayStation®VR(PS VR)を、日本国内にて2016年10月13日(木)より希望小売価格44,980円(税抜)で発売することを発表しました。

 

豊富なVRタイトルを準備

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画像引用元(PlayStation®VR | プレイステーション® オフィシャルサイト)

PS VRの発売同日に、ソフトウェアメーカー各社およびソニーインタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオから、PS VR専用タイトル/対応タイトル合わせて15本を日本国内向けにリリース予定です。具体的なタイトルでは、カプコンの「バイオハザード」、スクウェア・エニックスの「ファイナルファンタジー」があり、大手ゲームソフトメーカーが人気ソフトのVR版を投入することが決まっています。
さらに、現在40本を超えるPS VR専用または対応タイトルを開発しており、発売後も充実したソフトウェアラインアップを提供するようです。

 

ソニー、焦りの背景はスマホ企業

PS4は発売から2年もたっていないタイミングで早くも新型機に言及しています。それは、米アップルや韓国サムスン電子などのスマートフォンが毎年のようにモデルチェンジを繰り返し、最新技術を導入しているのに対し、高機能が売りのゲーム専用機が技術開発で後れを取ることへの危機感が背景にあります。

 

競合他社もVRに必死

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画像引用元(ソニーとMSが新ゲーム機開発、VR対応で高性能競争|Close-Up Enterprise|ダイヤモンド・オンライン)

マイクロソフトも13日、現行の「Xbox One」の後継機を開発する「プロジェクト・スコーピオ」を発表しました。4K映像やVRに対応する機器で、「史上最強のゲーム機」として最高性能を追求する方針です。

ゲーム業界「新参者」のオキュラス(米フェイスブック傘下)も、今年のE3ではソニーマイクロソフト任天堂と並ぶ巨大なブースを展開し、VR機器「オキュラスリフト」の体験会を行いました。

任天堂は、来年3月に新型ゲーム機「NX」を発売する計画です。ソニーマイクロソフトの新型機が高性能化の方向に進む中、NXのスペックにもあらためて注目が集まっています。

 

まとめ

VR元年とも呼ばれる今年、各社VRの開発を競っています。その背景は、1年半から2年で買い替えや技術の進化が進むスマホやパソコンのスピード感にゲーム機も対応しなければ取り残されるという危機感からなのです。VRゲームの普及が今後本格化する中、各社どのような特徴を持たせ差別化させるのかが鍵となってくるでしょう。

 

 

Cygamesの新作『Shadowverse』がApp Store売上ランキングでトップ10入り!(2/2)

前回に引き続き、今回も『Shadowverse』の制作の裏側について取り上げます。

 

前回はゲームのコンセプトや他ゲームとの差別化ポイントを取り上げましたが、今回は前回より運営側に近いところから企画・開発の段階を取り上げていきたいと思います。

 

アナログとデジタルの融合『Shadowverse』

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  (出典:Google Play 「Shadowverse」 )

 ゲームをデザインすることとコスト面からデジタル、特にスマートフォンで本格的なトレーディングカードゲーム(TCG)作ることは非常に難易度が高いことでした。

ゲームをデザインする
紙のゲームだとカードを印刷してルールを周知すれば、あとはプレーヤーが遊ぶだけなので複雑な効果も簡単に再現できますが、デジタルの場合は、実機上で再現させるときに相互作用といった要素も多く、開発に時間を要します。

コストを抑える
TCGを作るにあたり、カードイラストは非常に重要で、高いクオリティを担保した絵を揃えるのにコストがかかります。『Shadowverse』の場合は『神撃のバハムート』のクオリティの高いイラストが使えるということで、プロジェクトの座組は良かったようです。
ちなみに、『神撃のバハムート』のイラストは1万7000枚以上(進化差分含む)あり、そのうち『Shadowverse』では700枚程度(進化差分含む)使用しています。
今後、『Shadowverse』の描きおろしカードの追加も検討中のようです。

 

イラスト前提で作られていったクラス

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        (出典:株式会社Cygames HP)

 もともとある『神撃のバハムート』のイラストをベースにして、うまく均等に分けられるようにクラスキャラクターの性格などが設定されたため、開発当初からエルフやヴァンパイアなど、7人のクラスキャラクターという設定だけはありました。先にイラストがあり、それに合わせてキャラクターの特徴やユーザー体験を考えるところから始まりました。

 

みんなでカードゲーム!『Shadowverse』の企画・開発の現場

チームしては、メインのゲームデザイナーほか10名ほどのスタッフと一緒にゲームデザインを行っています。はじめはどのようなカードを作っていくのか、というところから話し合い、その後、実際にカードを印刷して作りました。そうしてできたアナログのカード同士で対戦を行い、能力の強弱や面白さを話し合って修正や改善を繰り返していました。

デジタルに落とし込む際は、エンジニアも印刷した紙のカードを使って、カードゲームをやりこみました。ゲームの理解を深めることで、デジタルでもアナログのような再現性を実装できたのです。

2014年の冬頃、開発チームの体制ができはじめ、まるまる1年ぐらいは基本ルールの設定や、各クラスの骨子となるカードの開発に時間を割いてじっくりと開発しています。リリースまでは1年半ほど要しました。

 

最高の状態でリリースしたいという運営側の想い

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     (出典:Google Play 「Shadowverse」 )

『Shadowverse』は最初にアナウンスしていた時期よりもリリースが後ろにずれこんでいます。延びた理由は、カードコンセプトやカードの作成ではなく、アプリ側での演出や遊びやすさといった部分のブラッシュアップを繰り返し行なっていたためです。また、競技性の高いTCGなので通信対戦の仕組みといった裏側の部分の開発を入念に進めていました。

最高の状態でリリースしたいという運営側の想いのもと、社内で何度もレビュー・ブラッシュアップを繰り返し、テストプレイ(クローズドベータテスト※)も2回行いました。2回目のテストプレイではアメリカ、カナダ、オーストラリアといった海外ユーザーに対しても行われ、その結果を受けて改修を行い、サービスの開始に至りました。

 

まとめ

このように『Shadowverse』は企画の段階から常にユーザーにとって面白いものは何か、どうすればクオリティの高いものができるのかをチーム一丸となって向き合ってきました。その結果、リリース2日でApp Storeの売上ランキングトップ10入りを果たしました。

今後のCygamesは、アニメーション制作子会社CygamesPicturesの設立、背景美術に特化した草薙の買収、基礎技術開発の体制強化を目的とした研究所Cygames Researchの設立からわかるようにイラストやデータ分析の強化を図っています。『Shadowverse』の追加のイラストはCygamesPicturesや草薙が担っていくのかもしれません。