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ネクソン、戦略的パートナーシップ締結の背景にあるものとは?

前回の記事でネクソンが山椒Studios合同会社と日本のゲーム開発会社では初となる戦略的パートナーシップを締結したことを発表しました。

今回は、ネクソンの提携の背景について取り上げていきます。

 

提携の背景

提携の1つ目、「協業」の背景としてはネクソンの日本国内のモバイルゲームの売上高減少にあります。

日本におけるモバイルゲームの売上高減少

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(単位百万円)

(画像:ネクソン2016年第1四半期決算説明資料より作成)

ネクソンの日本での売上高はモバイル、PCともに右肩下がりの状況です。
2016年第1四半期(1~3月期)モバイルの売上高は前年同期比で21%減の36億円、PCの売上高は前年同期比で27%減の10億円となっています。円高といった為替の影響による売上高減少は否めないものの、モバイル、PCともに現状を打開するようなヒット作が出ていない状態です。

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そして、日本のネクソンの売上高の特徴として、モバイル比率の高さが挙げられます。ネクソン全体のプラットフォーム別売上高(2016年第1四半期)ではPC78%、モバイル22%という構成になっています。それに対し、日本の売上高の構成比率(2016年第1四半期)はPC22%、モバイル78%となっています。ユーザーの利用するデバイスがPCからモバイルに変化する中、日本国内におけるPC市場の成長性は期待できません。そのため、モバイル市場における競争力強化が不可欠というわけです。

今回の山椒Studiosとの協業は、本格的に日本国内のゲームの開発力を強化し、日本のモバイルゲーム市場で生き残っていくための手段と考えられます。

 

提携の2つ目、「山椒Studios制作の新作ゲームのグローバル独占配信権獲得」における目的は売上構成比率の高い海外事業のさらなる強化にあります。


売上構成比率の高い中国・韓国

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上記画像からわかるように、ネクソンの売上高の9割は海外が占めています。
特に、中国で稼ぐ傾向が強まっています。地域別の売上構成比率を見ると、2016年第1四半期(1~3月期)は中国が258億円と、全体(574億円)の45%近くに達しました。2015年度第4四半期(10~12月期)の中国における売上高構成比率は40%以下であることを考えると、中国ゲーム市場での売上高増加が今後の鍵となりそうです。中国ではPCアクションゲーム『アラド戦記』が人気で、スマホ版も準備中です。

韓国での全体の売上高は前年度と比べて堅調な推移となっています。しかし、モバイルゲームの売上が好調で、2016年第1四半期の売上高は前年同期の約2倍の68億円となっています。
山椒Studiosによるモバイルの新作パズルゲーム『Match&Slash(仮称)』は、今後、韓国を中心に、その後は中国で配信されるのではないでしょうか。

 

その他のパートナーシップによる海外事業の強化

ネクソンは今回の山椒Studiosとの提携以外にも下記のように世界中のゲーム開発会社やIPホルダーとのパートナーシップを構築しています。

ライセンス契約:
Warner Bros.グループとの『LEGO®モバイル』
‒ EA及びRespawn Entertainmentとの『TitanfallTM』(PC)
SQUARE ENIXとの『FINAL FANTASY XIバイル』の共同開発

パブリッシング契約:
‒ EAとの『Need for SpeedTM Edge』(PC)
‒ Respawn Entertainment及びParticle Cityとの『TitanfallTMモバイル』
‒ Bluehole Studioとの『TERATMモバイル』
‒ QC Games初のPCタイトル

(ネクソン2015年第4四半期決算説明資料より引用)

 

 まとめ

ユーザーのゲームをするデバイスが変化する中、日本のモバイルゲーム市場でネクソンは苦戦を強いられています。今回の山椒Studiosとの戦略的パートナーシップによって果たして日本の売上高減少を食い止めることができるのでしょうか。2016年下半期には月に1本ペースで新作のモバイルゲームを日本市場向けに投入していくようなので、その動向に注目です。

また、ネクソンは世界中のゲーム開発会社やIPホルダーと、ライセンス契約やパブリッシング契約を結ぶことによって世界における配信会社としての地位を確立するのかもしれません。